なんとか時間通りに着けそうだ。

 康臣自身から佐祐理を車でパーティ会場に送り届ける役目を仰せつかり、普段はただの使用人である山本は 少し緊張していた。
 勿論普段から運転はしているし、休日のドライブは数少ない楽しみの一つだ。運転自体にも多少の自信はあ る。しかし、それは運転する車がベンツでなければ、また乗せる人間が雇い主の娘でなければ、の話だ。
 山本は倉田家の使用人連中の中では比較的新顔で、まともに倉田康臣や佐祐理と喋ったことは数えるほどの 回数しかない。もう一人同僚の使用人を世話役として乗せてはいるが、気の利いた会話なども出来るはずも無 く、車内は気まずい沈黙が続いていた。
 信号で車が止まったついてにバックミラーで改めて後ろに乗せている「お嬢様」を確認する。
 着ているものは勿論として、顔の作りやスタイルからして一般庶民とは作りが違う気がする。山本には2年 前くらいから付き合っている彼女がいるが、その彼女と佐祐理とは比べる気すら起こらない。バックミラーに 映る彼女の姿はどこか現実感すら薄れさせてしまうような雰囲気を持っている気がした。普段の適度に気さく で明るい「佐祐理お嬢様」とも、どこか一線を画している。

 ふと目の前を視線を戻すと、ちょうど信号が赤から青に変わるところだった。
 車はここから少しの間だけ暗い道を通ることになる。パーティの会場は小さな山を越えたところにあり、そ の道はどうしても通らなければならない。迂回していったら何倍も時間がかかってしまう。
 周りを走る車は一台も無く、信号も無い、快適なドライブがしばらく続くことになるわけだ。

 BGMもなく、会話も無い味気ないドライブは続いていた。
 もうすぐ山道も終わろうかという時だった。
 最初に目の前の異変に気づいたのは山本だった。

「……何だ? あの車――」

 100メートル先の道路の脇に白い普通車が止められている。
 妙だな、と思った。
 この近くには喫茶店やコンビニのような人が立ち寄る施設などはない。車が止まっている必然性が無い。 だったら立ちションとかパンクとか、その他ののっぴきならない事情でもあったのだろうか。
 50メートルくらいまで近づいて、山本は更なる異変に気づいた。

「――ちょっと、見ろよ。あれ、人が倒れてるんじゃないか?」

 助手席に乗っている同僚の喜多村に声をかける。
 遠めで見ているし、辺りはもうかなり暗いからはっきりとは分からないが、確かに車のすぐ横に人が倒れて いるように見える。人が倒れているのは道路の真ん中だ。避けて通ることは出来ない。
 山本は隣の同僚にアイコンタクトを取る。
 ――とりあえず、俺が車を止めて様子を見てこよう。
 ――頼む。
 会話成立。

「お嬢様。少し様子を見てまいりますので、しばしお待ち下さい」
「はい、よろしくお願いします」

 喜多村は車から降り、恐る恐る倒れている人間の所に歩いていく。
 交通事故か、はたまた急病か、生きているか、死んでいるか。
 様々な可能性が頭の中をぐるぐる回るが、唯一分かっているのは厄介事に巻き込まれたという確信だけ だった。

「もしもーし、大丈夫ですか?」

 倒れている人間は男だった。顔は遠目ではっきりしないが意外と若そうだ。

 その時――

 パンッ!

 突如止まっていた車の脇から発せられた何かが破裂したような乾いた音に一瞬気を取られ、次の瞬間喜多村 は首筋に強い衝撃を受け、何がなんだか分からないままアスファルトに倒れこんでいた。

    ☆   ☆   ☆

 パンッ!

 乾いた音が辺りに響き渡り、思索に耽っていた佐祐理は否応無く思索を中断させられることとなった。
 目を上げる。

 ――黒い。

 この車だけ光の全く入らない落とし穴にでも落ちたかのように黒い。

「ちょッ……な、何なんですかっ!?」
「わ、わかりませんッ! 何かペイント弾のようなモノかッ!?」

 パニックに陥りそうになった瞬間を見透かされたように、続けざまに乾いた音が鳴り響く。
 パンッパンッパンッパンッ!!
 車のフロントガラスと片方のサイドガラスがあっという間に黒に染められる。

「う、うわっ、どっ、どうなってんだよッ!!」

 運転席の山本は堪らず車外に出る。
 次の瞬間、鈍い音がしたと思ったら、山本の影はゆっくりとアスファルトに倒れていった。

 何がなんだか分からない。
 この平和な日本で、まさかテロ? いや、路上強盗か?
 人質にとられて、途方もない金額を請求されてしまったりするのだろうか。
 よりにもよってこんな日に。
 あまりの状況にパニックになることすら出来ない。

 ――佐祐理は、一体どうなってしまうんだろう?

 黒く染まっていない側のサイドガラスが車のヘッドライトで照らされる。
 対向車が通るのだろうか。
 いや、いつまで経っても光が通り過ぎないから違う。
 もしかしたら誰か助けに来てくれたんだろうか。

 コンコン。コンコン。

 何者かにガラスを叩かれた。
 思わず顔を上げる。

「………………………へ?」

 メイクは完璧、ドレスも完璧のフルメタルジャケットの佐祐理の口から出たとはとても想像できないような 間抜けな声が出た。
 無理もないだろう。
 路上強盗に襲われて、てっきり自分はこれから人質にさせられて、法外な身代金を払わされた挙句に口封じ のために結局殺されてしまうんだ――と、自分の未来予想図がはっきりと描けたその瞬間に――

 佐祐理のよく知るあの少年が満面の笑みでサイドガラスをノックしていたのだから。

    ☆   ☆   ☆

「――以上だ。何か質問は?」

 祐一が無い頭を振り絞って考えた作戦を北川以下同志達にプレゼンしてみせた。出来る限り穴の無いよう に、出来る限り誰も傷つけず、出来る限り迅速に――と考え出した作戦だったが、正直言って自信は無い。 細部に渡ってシュミレーションしている暇も労力も不足しているのは百も承知。だからこそ、のこの作戦 だ。

「――はい、手を挙げた北川君」
「ういッス。え〜っと何点かあるんだけど……まず、この作戦には車が必要不可欠だと思うんだが、一体ど うやって車と運転手の調達を?」
「うん、いい質問だ――非常にいい質問だよ、北川君……っていうか君がその質問をするのは些か愚問なので はないかとも思うんだが……まぁ答えることに関してはこちらも吝かではないよ」

 そう言いながら祐一はおもむろにズボンのポケットをゴソゴソ探り出した。

「え〜っと……お、あったあった。北川君、これを見るがいい」

 ズバアァァーーンッと効果音付きで北川の目の前にそのブツを突き出してやる。

「そっ、それはっ! オレの免許っ!! ちょ、ちょっと待て、なんでお前がそれ持ってんだよっ!?」
「ふっふっふ……ボクに隠し事はいけないな、北川君。それは実に、実に拙い選択だよ……まぁ簡単に 種明かしをするならば、先程君が入浴した時に君の財布から失敬したのだ」

 油断も隙もあったもんじゃねぇ。
 相沢の前では迂闊に私物を放り出したりするのは自重しよう、と心に決めた北川だった。

「いやいや、夏休み前からなんだか変だなとは思ってたんだよ。やけに付き合い悪かったもんな。なぁ、 北川君?」
「ぐっ……」

 言葉に詰まる北川。
 それもそのはず、北川は夏休み前からずっと自動車学校に通っていて、夏休みの始めに免許を取得したばか りなのである。「乗せろ」だのなんだのとうるさくなるだろうことは目に見えていたので祐一他クラスの連中 には秘密にしていたのだ。
 隠し事はバレる。
 これは真理だ。

「――というわけで、ドライバーに関しては多少の不安は残るものの、概ね問題はないだろう。車のほう も――」
「ああ、一応今家の誰も使ってない車がガレージの中に何台かある。君の作戦通りなら車の方に損害が出る 可能性は低いだろう。好きに使っていい。幸い僕の家族は揃いも揃ってそういったことには無頓着だ」
「――というわけだ」

 祐一の台詞を引き継いで久瀬が説明する。
 ていうか、使ってない車がガレージ内に何台か眠っているという久瀬家の経済状態は実に羨ましい限り だ。

「じゃ、じゃあもう一点。倉田センパイを掻っ攫ってくるには、不意打ちとはいえ最低2人くらいの大人の男 を戦闘不能にしなきゃならないだろ? そんなこと、一体誰が出来るんだよ」
「誰って……んなの舞以外出来るわけねぇだろ」

 へっ? と間抜けな顔で舞を見る北川。

「舞、出来そうか?」
「うん……相手のレベルにもよるけど……2,3人くらいなら無傷で意識を奪うことくらいは出来ると 思う」

 舞はそんなこと朝飯前だと言わんばかりにいつも通りの顔で言ってのける。

「ま、マジっすか……?」
「そこまで言うなら、北川、お前が試してみるか?」

 北川も高校時代に不良・川澄舞の数々の武勇伝を噂で聞かなかったわけではない。
 ――曰く、木刀を持てば一振りで一気に3人の人間を打ち倒すとか。
 ――曰く、猛獣と化した野生の犬を片手で制してみせたとか。
 北川は高校時代、その手の噂はトンデモ系と決め付けて全く取り合わなかったクチだ。
 仮にも女でそんな猛者、いるわけないじゃん。
 いるわけないが……
 今北川の目の前にいるのは、そのトンデモ系の噂の張本人・川澄舞――
 ぶんぶんぶんぶん。
 擬音が聞こえてきそうなほど首を振る北川。
 北川はヘタレだった。

「――もう他にはないか?」
「――では最後に一つだけ」

 手を挙げたのは久瀬だった。

「もしも今回の作戦が上手くいって首尾よく倉田さんを連れてくることが出来たとしたらだ――これはもし もの話だが――もしも倉田さんがその事を受け入れなかったらどうするんだ?」
「…………」
「そもそも、今回の話は武田の側から両グループの合併を早める意図で提案されたものだ。倉田さんがどう 思っているかどうか僕には分からないが、倉田さんだってその程度のことは理解しているだろう。いくら僕 達が必死に懐柔しても――徒労に終わる可能性も無くはない」

 そんなことない、と舞は叫びたそうな顔をしていたがどこか思い当たる節があったのか、舞は喉まで出かか った言葉を飲み込んだ。

「――確かにそういうこともあるかもしれない」

 少しの沈黙の後、口を開いたのは祐一だった。

「だけど、俺は佐祐理さんを信じてる。きっと俺達のところに戻ってきてくれると俺は信じてる。それ に――」

 言葉を少し溜める。

「今回のことは俺のエゴが出発点だし――徒労に終わったって構わない。それでも――それでも佐祐理さんを このまま行かせてやるなんてことは出来ない。このまま何もしないで諦めることだけはしちゃいけないと思う んだ――」

 舞が真剣な顔で頷く。
 北川は不敵な顔で笑う。
 久瀬も祐一の答えに満足したように笑った。


 そして、時間は流れ――

 もうすっかり日も暮れ、空には雲の隙間からぼんやりと三日月が顔を覗かせている。
 佐祐理は黒のペイント弾から難を逃れたサイドのガラスの向こうに祐一の姿を見ている。
 一体何なんだろう。
 今の状況を正しく把握できない。
 先程からの周囲のあまりの状況変化に佐祐理の現状処理能力が追いついていかない。
 そんなことはお構いなしとばかりに車の外からは祐一を含む数人の話し声が微かに聞こえてくる。

「川澄センパイってすげえんだな……」
「それほどでもない」
「おい舞。照れてる場合じゃねーぞ。早くしないと会場からの使いの奴らが来ちまう。北川は車のエンジン のほうを頼む。舞はノビてる奴らを一応道路脇に除けといてくれ」

 ガチャ。
 祐一は何の躊躇いもなく佐祐理の乗っているベンツのドアを開け放つ。
 ふと目が合った。
 佐祐理はまだ呆けている。

「お嬢様、不肖相沢祐一、貴女を奪還するため少々手荒になってしまったことはご容赦頂きたい」

 祐一は慇懃無礼にわざとらしくお辞儀。
 段々と佐祐理の頭も再起動し始める。

「な、な、な、な、」
「こちらとしても久闊を叙したい気持ちは山々なのですが、時は我々に猶予を与えてはくれない。ここは一 つ僕と共に来てはいただけませんか?」
「な、な、な、な、」

 祐一はわざとらしく佐祐理に手を差し伸べる。
 佐祐理は今にも暴発寸前。

「僕の服装はこんなですが、我々の仲だ、まぁ気取ることはありますまい。ここは早く離脱を――」
「なッ! なにやってるんですか―――――――――――――――――――――――――ッッ!!!」

 キレた。

「ゆっゆういちさん、あ、あなたは、い、いったい、いったい……」

 佐祐理は顔を真っ赤にして手足をばたばたさせている。一般的に言うとテンパっていた。

「ふむ……」

 祐一はこの期に及んでテンパっている佐祐理を上から下までじっくりと観察。
 佐祐理のドレス姿は高校の時のあの舞踏会以来だ。最もドレスの質はあの時とは比べるべくも無いが。 そしてメイクのおかげか佐祐理自身の美しさもあの時とは段違いだ。
 ――単に自分の欲目というやつかもしれないが。

「おっと、こんな事してる場合じゃねぇや。佐祐理さんちょっと失礼します――よッと」

 祐一は佐祐理の背中と膝の裏側を支えてヒョイと持ち上げた。
 所謂お姫様だっこである。

「ちょっちょっとゆ、ゆういちさん、下ろしてっ、下ろしてくださいっ!!」

 じたばたじたばた。
 相変わらず佐祐理は顔を真っ赤にして祐一の腕の中で手足をばたつかせて暴れている。
 そんな佐祐理を上から眺めて悦に入っていると、

「相沢ッ、もう時間がないぞっ! 羨ましいことやってないで早く来いッ!」

 パッパー、と北川の乗った車からクラクションが聞こえてくる。

「ちぇっ、折角佐祐理さんの感触に酔いしれていたってのに」
「なっ……!」
「ま、そんなわけで、さっきの車と比べるとちょ〜〜〜っとばかしちゃっちい車だけど我慢してください ね……っと」

 祐一は後部座席のドアが開くと、素早く佐祐理を中に座らせる。
 そしてすぐさま自分も助手席に乗り込む。
 北川は祐一が乗り込んだのを確認するとすぐにアクセルを踏み込み車を発進させた。


「ふぅ……とりあえず一段落だな」
「…………」
「…………」
「…………」

 祐一は車内の沈黙に耐え切れず口を開いてみたが、車内の人間から反応が返ってくることは無かった。

「――祐一さん」

 反応が返って来た。

「お、佐祐理さん、落ち着いたか?」
「ええ、おかげさまで」

 普段の佐祐理からは考えられないほど冷たい声だった。

「祐一さん」
「は、はい。な、なんでしょう?」

 佐祐理の迫力に圧されて、少し声が裏返ってしまった祐一。

「何故、こんなことを?」

 その声は、佐祐理が自分で意識した以上に冷たい声色を表現した。
 自分が今怒っているのか、それとも悲しんでいるのか、はたまた喜んでいるのか、それすらも自分ではわから ない。

「あの時さよならはちゃんとしましたよね。佐祐理と祐一さん達はきっぱり別れてしまいましたよね。それな のに、それなのに――」

 段々と佐祐理の声に涙の色が混じりだした。
 勿論佐祐理にそのような自覚は無い。

「あの後佐祐理はっ……辛かったけど、悲しかったけど、ちゃんと心の中で整理、つけたんですよ? それな のに――なんでまた佐祐理の前に現れるんですか? なんで、佐祐理は弱くてずるくて汚い女の子なのに、な んで放っておいてくれないんですか? もう会えない、もう会わないって決めたから、決まってしまったから、 佐祐理はっ、必死に忘れようとして――」

 それからしばらくの間、佐祐理は全く言葉を発することが出来なかった。
 沈黙が支配する車内で、唯一つ佐祐理の嗚咽だけが響いていた。
 それから、また佐祐理は口を開いた。

「――戻してください。まだ、今なら間に合います。祐一さんも舞も、佐祐理のことを忘れられます。今なら まだ――取り返しがつきます。だから……だから――」


「こぉ―――んな事言ってますけどぉ、どうしますぅ、相沢さん?」


 佐祐理の涙声を覆い隠すかのように、突然北川が場違いな声を上げる。

「そぉ―――ですねぇ、どうしましょっかぁ、北川さん」
「そんなの決まってるっしょ? 相沢さん」
「そんなの決まってるさ。北川さん」

 祐一も北川に調子を合わせる。
 何が起こっているのか分からず、再度目を白黒させる佐祐理。

「――オレ達を誰だと思ってます、倉田センパイ? 泣く子も黙るエーリ目的のユーカイ犯って奴ッスよ?」
「――佐祐理をどうするかは私達の胸三寸」
「ま、舞?」

 舞も参加する。
 佐祐理は目を更に白黒させる。

「エーリ目的のユーカイ犯であるオレ達が――」
「ユーカイされた側の佐祐理さんの希望なんて――」

「「「――聞くわけないでしょ?」」」

 まるで練習を積んだコーラスグループのように、3人の声は見事なハーモニーを奏でて佐祐理を貫く。
 言葉を発した3人も、ここまで綺麗に揃ったのは完全に予想外で、祐一も、舞も、北川も、互いにキョロキ ョロ相手の顔を見回していた。

 ――これはヤバイ。
 気を抜くと笑いのストッパーが外れ、腹が捩れて腸捻転を起こしそうになるほど大爆笑してしまいそうだ った。
 祐一も、舞も、ハンドルを握っている北川でさえも、肩を震わせて必死に笑いを噛み殺している。
 佐祐理にとってその光景は、どうしようもなく馬鹿で、どうしようもなく最悪で――どうしようもなく素敵 に思えた。

 クスッ

 他の誰でもなく、佐祐理が発した声だったはずだ。
 所謂「ユーカイ」の人質である佐祐理の漏らした小さな笑いはたちまち車内全体に伝染する。

 あっはっはっはっはっ
 うひゃひゃひゃひゃ
 げらげらげらげらげら

 車は既に走っていない。このまま運転し続けるのは危険だと判断したのか、北川は車を道路の脇に止めて いた。

 ――ああ、思い出した。
 ――笑うって、こういうことだったんだ。

 いつの間にか佐祐理も3人と一緒に笑い転げていた。
 こんなに笑ったのはもしかしたら人生で初めてかもしれない。
 あまりに笑いすぎて、また涙が出てきた。
 お腹も少し痛くなった。
 溢れ出した涙で、折角東城が時間をかけてやってくれたメイクが流れてボロボロになってしまった。
 勿体無いとも思ったけど、なんだかそれも悪くないと思えた。

 ――だって佐祐理は「ユーカイ」されたんだから。
 ――「ユーカイ」されたんだから、「ユーカイ犯」さんの言うこと聞かないと殺されちゃうかもしれないん だから。

 どうしようもなく痛くて、どうしようもなく嬉しかった。
 どうしようもなく苦しくて、どうしようもなく幸せだった。



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