僕は今でも思い出すことがあるんだ。
公園の木々を揺らす風が道端に落ちている枯葉をふあっと舞い上げる時とか、急いでる朝に買ったコンビニおにぎりの封を開けてそっけない中身を頬張った時とか、お気に入りの映画のエンドロールを眺めて流れた涙の跡をそっと指でなぞった時とか。
ともかく、そんな日常の何でもない風景の隅に隠れている君の思い出を、無自覚に指の先にひっかけてしまうことがある。
悲しい記憶でも、楽しい思い出でも、寂しい光景でもなく、ただそこに在るだけの君の姿を。
ほら、そこに。
あそこにも。
ほら、ほら。
ああ、そうか。
僕が死ぬ間際に思い浮かべるのはきっと君のことなのだろうと、僕には不思議な確信がある。
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