もしも恭介がどこに出しても恥ずかしくない漢(ヲタク)だったら


  恭介、本を拾う
  恭介、本を読む
  恭介、アニメを見る
  恭介、ダンスの監督をする
  恭介、思い出したかのように本を作る
  恭介、エロゲにはまる
  恭介、ラノベを借りる(前編)
  恭介、ラノベを借りる(中編)












【 恭介、本を拾う 】


「ねえ、昔みたいに、みんなで何かしない?」

 だから僕はそう提案していた。

「ほら、小学生の時。何かを悪に仕立て上げては近所をかっぽしてたでしょ、みんなで」

 恭介なら、そうしてくれるはずだ。
 十年という月日が経っても、僕と同じ気持ちでいたから。
 そして、今も、恭介は僕たちのリーダーだったから。

「じゃ……」

 恭介が屈んでいた。
 その手が何かを拾い上げる。

 ふと違和感が走る。
 この世界の正しさなんてものを疑うほど、僕は疑心に囚われてはいないはずなのに。なぜだろう。その時僕は、今目の前にある現実がどこか致命的な部分で間違っているように感じてしまっていたのだ。

「……同人誌を作ろう」
「「「「……はい?」」」」

 恭介以外全員の声がハモる。みんなの視線は恭介の手の中にある一冊の本に注がれている。あれは、間違いない。僕の目が急におかしくなったとか、そういうことでないのだとしたら、アレは――

「18未満お断りの同人誌ですね。しかも男性向け」
「西園さん、いつの間に」
「お気になさらずに」

 突然現れた西園さんは、白い日傘をゆらゆらさせながらまた去っていった。恭介は全く意に介さない様子で僕らに向き直り、決然とこう告げるのだった。

「同人サークルを作る。サークル名は――リトルバスターズだ」

 いやいやいやいや。
 高速で首を横に振る僕らに恭介が気付くのは一体いつになるのやら――

 ちょっと首が疲れてきましたよ?






【 恭介、本を読む 】


 朝の恭介の発言の意図を確かめるため、授業が終わると僕はすぐに恭介の教室に向かった。

「ちょっとー、見たー? あれ」
「見た見た。何なの? ちょっとキモいっていうか」
「ちょっとカッコよさげだったのにねぇ。ゲンメツー」

 三年の階はちょっと妙な雰囲気だった。あちこちで不穏なこそこそ話が繰り広げられているみたい。聞こえない。聞こえない。僕は何にも聞いてない。
 恭介は教室で大人しく読書をしていた。いつもと同じように、どこか神聖な雰囲気を醸し出す恭介。しかし、今日は全く別の意味で近寄りがたい存在となっていた。出来れば声をかけずにユーターンして教室に戻り、真人と謝筋肉祭の続きをしたい衝動にかられるが、なんとか意を決して声をかける。

「恭介」
「おう、理樹か」
「何、読んでるの?」

 僕の問いに教室全体がうんうんと頷いているのが如実に感じられる。それが聞きたかったんだ! という心の声が聞こえてくるようだ。
 そんな空気を読んでか読まずか、恭介はしれっと答える。

「いや、F○teのエロ同人だけど」

 言っちゃった――――っ!!
 はっきり! くっきり!
 え? 教室でエロ同人読んで何が悪いの? とでも言いたげだ!

「ほら理樹見ろよ。本編じゃ見られなかったイ○ヤの」
「ちょっと待って恭介! このままじゃ恭介のイメージが大変なことに!」

 僕はなぜか本気で恭介の肩を揺さぶっていた。慌てふためく僕を「ふん」と恭介は鼻で笑っているように見えた。こんなことでうろたえるなんて、理樹はまだまだ修行が足りないな――などと。

「じゃあ聞くが――理樹」
「うん」
「この世界に、ブルマっ娘とのエロの他に、どんな大切なものがあるっていうんだ」

 あーやっぱり恭介って(21)だったんだ――
 そんなことを思いながら、僕の意識は急速にこの世界を離れていくのだった。

 ちなみに、恭介とブルマの少女が花園で戯れている夢を見た。
 超スピードで目を覚ましましたよ?






【 恭介、アニメを見る 】


 寮にはテレビが三台しかない。食堂にあるのと、談話室にあるの、それに寮長室にあるの。生徒が見れるのは食堂にあるやつと談話室にあるやつなのだが、時間は決まっている。午後九時以降の視聴は一応規則で禁止されているのだ。

「でも、それじゃあ意味がないんだよぉ!」
「仕方ないよ恭介、規則なんだし」
「理樹! お前は何もわかっちゃいない!」

 憂いを帯びた笑みを浮かべる恭介。

「恭介がそこまで言うなんて……何か理由があるんだね」

 何か理由があるのかもしれない。恭介の考えは時として僕らには計り知ることが出来ない深度を持っている……こともある。最近ちょっと自信がない。

「ああ、そうさ理樹……こいつは俺の人生の問題なんだ」
「恭介……」
「今期ナンバーワンアニメ『くら☆など』が、俺はっ! どうしても見たいんだよおおおぉぉぉ!!」
「へっ?」

 呆気に取られる僕らを尻目に『くら☆など』の魅力を訥々と語りだす恭介。それを詳細に記述するのは紙面の都合上不可能なのでカット。

「――馬鹿だな」

 鈴の呟きが全てを代弁していた。

 まぁ、いくら恭介でも無理だろ――
 そう思っていた時期が僕にもありました。


  ☆  ☆  ☆


「おっす!」

 いつもと同じ恭介の朝の挨拶だったが、幸せが溢れんばかりに輝いた笑顔。

「おっ、今日はやけに元気だな恭介。今日はあれか、筋肉祭りでもやってんのか?」
「いや、今日も良い日だな諸君! 朝飯食って、元気に一日頑張ろうじゃないか!」

 真人を気持ちよくスルーするのはいつものこととしても、やけに元気だ。昨日は件のアニメのことで酷く落ち込んでいたというのに。

「まさか――恭介」

 謙吾も同じことを思ったらしく、疑いの目で恭介を見ている。

「お前、食堂のテレビ夜中につけてみたんだろ」
「ちっち、そんなことするわけないだろマイシスター。規則で決まってるじゃないか」

 もうそのレスポンスだけで引いてしまう鈴。鈴の後を引き継いで僕も聞いてみる。

「でも、見たんでしょ?」
「ああ、それはばっちり見たさ。いやぁ! 皆にも見せてやりたかったぜ!」

 見たのか。
 いい感じにテンションが上がって変な人になっていく恭介。だんごっだんごっと人目を憚らずに歌っている恭介から、僕らは半歩引いた。鈴なんか明らかに汚物を見るような目で見ている。
 そんな僕らの横を通りすがるある人物。

「おはよう」
「寮長! おはようございます!」

 いつも以上にいい返事をする恭介。
 ん?
 よく見ると恭介と寮長が何かアイコンタクト。「越後屋、お主も悪よのぉ」「へっへ、お代官様こそ」という感じの。

「恭介まさか」
「みなまで言うな理樹」

 どこか含みのある笑顔を浮かべる恭介。こうなると恭介はどうあっても口を割らない。どうやって寮長を仲間に引きずり込んだのか、僕らに知る術はなくなったわけだ。恭介は誰も聞いていないのに、饒舌に『くら☆など』の美点を語り続ける。どうにでもしてくれと、僕らは恭介の話を聞くことしか出来なかった。

「ま――何にでもどこかに抜け道があるってことだな」

 アニメ見たさに一晩で寮長まで抱き込む恭介。
 ジェバ○ニ先生も爆笑だっぜ!(やけくそ)






【 恭介、ダンスの監督をする 】


 放課後、練習に行く途中に通りかかった教室から聞こえてきたのは、やけに軽快な音楽とステップを踏むような足音、楽しそうな騒ぎ声。僕の耳が狂ったのでないのなら、この声にはばっちり聞き覚えがあったりします。

「葉留佳さん何やってるの」
「あっ、理樹く〜ん! やっほーっ!!」

 扉を開けるとそこには予想通りの人と――

「リキ、こんにちわなのです」
「理樹くん、こんにちわ〜」

 クドと小毬さんまで。

「こんなところで、何やってるの?」
「ちっちっち、分かんないなんて、理樹くん、そんなことでは駄目駄目ですヨ」

 葉留佳さんの言葉に教室を見回してみると、整然と並べられていた机は綺麗に寄せられていて、床にはラジカセ。

「ダンス、なのですよっ!」

 あ、なるほど。納得。

「楽しいよ〜」

 野球だろうがダンスだろうが、何やってても楽しそうなのは小毬さん。クドや葉留佳さんだって言うに及ばずだ。
 とりあえず、三人の練習を見学することにした。葉留佳さんたちのことだから割と適当なのかなぁと思ったら、割としっかり振り付けされていてびっくりした。

「へぇ、結構やるもんだなぁ」
「ふっ、これくらいで驚くのは早いぜ、理樹」
「うわっ」

 いつの間にか背後にいたのは、ミスター想定外の異名をほしいままにしている恭介。どこから入ってきたんだろう。窓からか。ここ三階なのに。

「やっぱりこれは恭介の?」
「もちろん。曲チョイス俺、振り付け俺、超監督俺」

 漫画雑誌らしきものを片手にこともなげに言ってのける恭介はやっぱり凄い、色んな意味で。

「完成形は、全員揃ってから、だぜ?」


  ☆  ☆  ☆


「というわけで全員集合してみました」

「あほだな」
「やあ理樹君ごきげんよう」
「これは羞恥プレイでしょうか……マニアックです」

 鈴に、来ヶ谷さん、西園さん。

「なんでわたくしまでこんなことを……ぶつぶつ」
「……」←赤面していて言葉にならず。

 笹瀬川さんに、なぜか二木さんまでいる。
 そして、これは特筆すべきことなのだが――みんな一部の隙もないチア姿なのだ。両手にポンポン、ミニスカ。白ソックス。
 壮観。
 これを壮観と言わずして、一体何を壮観と呼ぶのか。

「恭介」
「どうした、理樹」
「どうしてチアガールなの?」
「それはもちろん――萌えるからだ」

 ぐっと親指を突き出して、二カッと魅力的に笑う恭介。ごめん、恭介。僕、ついていけないかもしれない。

「ちなみに、チーム名はリトル・ラブラブ・アンデッドーズだ」
「恭介、まさか踊る時にゾンビのマスクつけたり、やたら動きにキレのあるリーダーがいたりしないよね?」
「……えらく具体的だな」

 そんなことを言いながらも恭介の額には一筋の汗が。
 誤魔化すように恭介はすっくと立ち上がり、居並ぶ団員達に向かって号令をかける。

「それじゃそろそろ行くぞ。準備はいいか?」
「おっけーですっ」
「どんとこいですヨ!」

 クドと葉留佳さんが元気一杯に答える。他の皆もすぐに集中していくのが手に取るように分かる。無駄に鍛えられた感があるのが凄いなと思ったりしちゃいました。
 恭介がおもむろにラジカセの前に立ち、再生スイッチに手を添える。高まる緊張感。

「ミュージック――スタート!」















 もってい〜け最後に笑っちゃうのはわたしのはず〜♪
 セーラー服だからです←結論〜♪















 ちなみに。
 小毬さんがいつも行ってる老人ホームの慰労イベントで披露するらしい。お爺さん達、ショック死しなければいいんだけど。結構本気で心配してますよ?






【 恭介、思い出したかのように本を作る 】


「オリジナルで行くべきです」

 僕らが夏コミで発表する本の方向性は決まったのは、ほとんど西園さんの鶴の一声のおかげと言っていい。
 当初、『かなぶんのなく頃に』で男性向け18禁を作ることを強硬に主張していた恭介だったが、同人サークル「リトルバスターズ!!」女性メンバー(実は男性メンバーもそんなに賛成してない)の必死の抵抗にあって、あえなく断念することになった。

「仮にも学生寮でエロ同人を本気で作ろうとしていた恭介氏の情熱には敬意を表しないでもないがな」
「そこ、感心しない」

 来ヶ谷さんと恭介は、やはりどこか通じるものがあるようだ。視線を交し合っていい笑みを浮かべる二人を見て、背中を戦慄が走る。この二人を野放しにしてはならない。他メンバーの暗黙の了解である。
 協議の結果、絵を描くのは小毬さん、来ヶ谷さん、西園さんを中心にしてその他のメンバーはサポート、ストーリーは全員で協力して作ることになった。どう考えても絵を描くほうに時間がかかるので、外部からも応援に来てもらった。

「なんでわたくしがこんなことを……ぶつぶつ」
「ざざみ、言ってることがダンスの時と変わらないぞ」

 だから、さ・さ・せ・が・わ・さ・さ・み、ですわー! と、始まるいつもの鈴vs笹瀬川さんのバトル。もう見慣れた光景である。

「でも、笹瀬川さんが絵描けるなんて、来ヶ谷さんよく知ってたね」
「少年、私にわからないことはないのだよ」

 来ヶ谷さんに限っては本当っぽいので笑えない。怒らせたらどんな目にあうのだろうか。ぶるぶる。

 そんなこんなで、夏を目指して、僕らの同人誌製作が始まったのだった。


  ☆  ☆  ☆


 後から聞いた話だが、コミケで本を出すのは恭介にとって一つの夢だったらしい。締切直前、完徹三日目の夜にぼそっと僕にだけ教えてくれた。

「鈴にはキモいキモい言われるけどな……」

 こう見えても恭介は、鈴の言葉にだけはショックを受ける。他の誰に何を言われても意に介さないが、鈴だけは特別。そういう恭介を見るのは、こう言っちゃ悪いが微笑ましい。

「笑うなよ、兵が見ている……」
「何かのネタだってことは分かるけど、それ以上は僕の突っ込みの許容限度を越えてるよ……」
「まぁ、なんだかんだ言いながら鈴も楽しんでやってくれたみたいだから、良かったよ」

 小毬さんや来ヶ谷さんに教えてもらいながら一生懸命絵を描いている鈴、という構図を制作期間中に何度も見た。その度に恭介は嬉しそうに笑っていた。恭介のそんな気持ちは僕にもわかる。本当に少しだけ、なのかもしれないけど。
 そんな話をしていたら照れくさくなったのか、「『くら☆など』の時間だ! 後はよろしく頼むぜ!」などと言って、さっさと部屋を出て行ってしまった。

「真夜中、男同士の語らい……ああ、萌えです」
「西園さん、誤解を招くようなことを呟かない」
「うふふふふ」

 駄目だ。完全に脳内薔薇の花畑状態に入ってしまわれた……と思ったら意外に早く帰還してくれた。

「恭介さんって、いいお兄さんですね」
「どうしたの、いきなり」
「鈴さんがあんなに懐くのも無理ないですね」
「懐いてる?」
「はい」

 鈴は部屋の隅の方に作った机(みかん箱机)に突っ伏して寝ている。まじまじとその寝顔を眺めてしまう。

「この年になっても、こんなに仲の良い兄妹……珍しいと、思います」
「そう……だね」
「私にもこんな兄がいたらなぁとか、時々思うことがあります」

 うん。
 それには素直に頷ける。

「突然ですけど、鈴さんの小さい頃の夢って、直枝さんはご存知ですか?」
「ううん」

 聞いたことがない。

「これ、内緒ですよ……来ヶ谷さんがやっとのことで口割らせたんですから」

 言いながらうふふふふと口の中で笑う西園さん。

「……お嫁さん、なんですって」
「へ?」
「恭介さんの」

 ――おにーちゃんの、およめさんになる。

 遥か昔、鈴は恭介のことを「おにーちゃん」と呼んでいた頃があったそうだ。鈴にいじめられた恭介が涙ながらに話してくれたことがある。真人と会った頃には既に「恭介」と呼び捨てだったそうだから、もっと前のことか。
 なんていうか、くすぐったいな。鈴にもそんな頃があったんだなぁと思うだけで。
 段ボールの机でよだれ垂らして眠る鈴が、急にものすごく可愛い女の子に見えてきた。守ってあげたくなる。恭介が鈴を見て思うように、僕も。

「うふふ」
「あははは」

 西園さんと声を殺して笑い合う。こんなこと話してるって鈴に知れたら、きっと怒るだろうな。相手が僕であることを差し引いても、ハイキック三発分くらい。いや、もっとかも。
 ひとしきり笑い合うと、どちらからとなく溜息をついた。

「あと、何ページかな」
「もう後少しです。頑張りましょう」

 三十分くらいで恭介は戻ってきた。なんかつやつやしてる。何してたんだか。


   ☆  ☆  ☆


 その後のこと。
 なんだかんだとあったが、無事に本は完成した。
 そして、これは最後に確認しなかった僕たちが悪いのだが、なぜか巻末に誰も書いていないBL系の小説が載っていた。誰もが知らないと言ったが、これを入稿しに行ったのは誰なのか、僕はしっかり知っている。犯人は誰なのか、あえて記述することでもないので、ここでは割愛。

 しかし、なんでモデルが僕と恭介なのかなぁ。
 僕らのことを、汚物を見るような目で見る鈴の視線が辛すぎるんですが、ねぇ?






【 恭介、エロゲにはまる 】


 最近恭介が部屋から出てこない。

 夏コミが終わり、あれやこれやで夏休みも終わり、そうこうしているうちに授業まで始まってしまって一週間くらい。同人誌製作で止まっていた野球の練習も再開し、みんなもようやく普段どおりに戻った矢先だというのに、恭介は一体どうしたというのだろう。
 恭介をなんとか部屋から連れ出そうと、みんなの力を借りようとしても謙吾は「どうせいつものきまぐれだ。ほっとけ」と言って取り合わないし、鈴を誘って部屋から連れ出そうとしても「また馬鹿兄貴の馬鹿兄貴なところを見せられるだけだから、やじゃ」と言って付き合ってくれない。真人にいたっては「そんなことより俺と筋肉フェスティバルだ!」と、なぜか真人謹製の筋肉トレーニングに有無を言わさず一日付き合わされた。おかげで身体の節々が痛い。あうぅ。
 他の面々に協力を頼もうかとも考えたんだけど、なんかこのミッションは自分一人の力(責任)で遂行したほうがいいような気がして(それを人は神のお告げと呼ぶ)、結局僕は一人、こうして恭介の部屋の真ん前で突っ立っているわけだ。
 ……か、帰りたいよぅ。
 まぁ、いつまでもこうしているわけにもいかないので、意を決してドアをノックする。
 こんこん。

「…………」

 応答はない。

「きょ、きょーすけー」

 なぜか小声になってしまう僕。しかし、やっぱり返事はなかった。玄関に靴はあったし、部屋の中にいないってことはないはず。もっかいチャレンジすることにする。今度はもっと強く。
 どんどん!

「きょーすけー!」

 返事はない。ちくしょー、ドア蹴り飛ばしてやろうかと思ったら、今のノックでドアが内に開いていることに気付いた。な、なぁんだ、開いてるんじゃないか。これなら普通に入ればよかったよ。

「はいるよー……、お邪魔しまーす……」

 おっかなびっくり薄暗い部屋の中に踏み込むと、そこに響くはカチカチカチという不気味な連続音。なんだこりゃ、カチカチ山か。背中に薪なんか背負ってないし、もちろん火なんかついてないぞ。

「……って、うわぁっ!」

 暗がりの中にぼわぁと浮かび上がるディスプレイの光に照らされていたのは、よく見れば異様にやつれた恭介だった。あまりにやつれていたので、ぱっと見て誰だかわからなかった。

「恭介っ、恭介っ」

 慌てて近づきその肩を握る。すると――

「……がくりこ」
「うわぁ! 恭介っ! しっかりしてっ!」

 がっくりと力を失い倒れる恭介。倒れる恭介を支えながら、僕はこの目で確かに見た。意識を失いながらも高速クリックをやめない恭介の右腕を。そして、ディスプレイに映し出された“それ”を――


『今日のしゅんちゃん、ちょっとエッチさんだから……わたしも頑張ってエッチさんになるね』


 どこから見てもエロゲです、本当にありがとうございました。


   ☆   ☆   ☆


「生き返ったぜ」

 げっぷと、どうもまだ反省の色がよく見えない恭介を無言で睨んでみる。すると恭介は済まなそうに頭を垂れてみせた。

「悪かった、理樹」
「分かってるならいいけどさ」
「今度からエロゲやる時はお前も誘うから」
「違うよっ」

 見ると、あっという間に食べ終わったらしき空食器。すげえ早食いだ。食堂を閉めかけていたおばちゃんに頼みこんで、一食分だけ作ってもらったのだった。

「とにかく、エロゲもいいけどさ、何か食べるとか寝るとかしようよ……」

 なんと飲まず食わずの完徹四日目に突入してたらしい。その集中力、他の所に活かせばきっととてつもない大人物がこの世に誕生したであろう。まぁ、他に活かせないからこその集中力なのかもしれないけどね。

「不眠不休での修行(と書いてプレイ)……俺はエロゲーマーの鑑だな」
「ていうか、そもそもどうやってパソコン手に入れたの? 前は確か持ってなかったのに」
「ああ、夏休みの間にバイトしてな」

 いつの間にそんなことを。

「ゲームはこの前の夏コミで知り合いからもらったり買ったり……まぁ色々だ」

 というか色々集めすぎたらしく、あれだけプレイしてもまだ積みゲが何本もあるのだという。

「月○だろ、か○しの、ああっこの前衝動買いした個○病室もまだだし、ひ○らしもまたリプレイしたいし」
「そんなふうにして恭介は部屋に引きこもって行くんだね……」
「うん、クロ○ャンといえばまた家族○画も久しぶりにやってみたい。ああ、それならまずユメミ○クスリをやらなきゃだしな」

 アーメン。
 僕は溜息をついて席を立った。

「理樹、どこ行くんだ?」
「いや、もう部屋に戻ろうかと」
「ん? 部屋に戻って何するんだよ」
「部屋に鈴たち待たせてるから、あんまり待たせとくのも悪いし……って、えっ!?」

 がっし。
 刹那、恭介が僕の腕を掴む。すごい力。きょ、恭介、さっきまでへろへろだったくせして、一体どこにそんな力がっ!?

「まま、そういわずに」
「ぼ、僕、宿題あるから、また今度ね」
「一本貸してやるから」
「僕パソコン持ってないし……!」
「俺の部屋使っていいから」
「い、いやっ……! 恭介の相部屋の人に悪いよっ……!」
「あいつのことなら心配しなくていい。何日か前から姿見せなくなった」
「それどう考えても避難だよねっ!?」
「なぁ頼むぜ理樹? 俺たちの仲じゃないか……!」
「嫌だいっ! 僕は部屋に帰るんだいっ!」
「なっ? 一緒にリ○バスやろうぜっ……!? ほら、一日交代でやらしてやるからさっ……!!」
「ままま、間に合ってますっ!!」
「俺だけエロゲヲタってのもアレだろっ……!! ほら仲間仲間っ……!! 仲間になれば怖くないんだぜ……!!」

 なんとか自室に逃げ込もうとする僕と、なんとしてでもそれを阻止しようとする恭介。一進一退の攻防の中、恭介はじりじりと僕を目的地へと引きずりこんでいく。地力の違いに成す術なく、恭介の部屋という名の魔宮へと引きずり込まれていく僕。

「うわああああぁぁぁぁ、おたすけえええぇぇぇぇぇ…………」

 悲鳴は寮内にこだまし、やがて静寂とマウスのクリック音が辺りに満ちた。
 後に残されたのは恭介が平らげた特別定食の残骸と、「ガチホモ……アリです!」とデジカメ片手にガッツポーズを取る西園さんだけだった。






【恭介、ラノベを借りる(前編)】



「あれ? 恭介は?」
 今日も今日とて野球の練習である。各人それぞれに配置につき、鈴の投球を待つばかり――となったところで、恭介の姿がどこにも見えないことに気付いた。
「俺は見てないぞ」
「私もですー」
 ジャンパー姿が板につきすぎてむしろ同化してるんじゃないかと疑われている一塁手・謙吾と、木陰で小毬さん謹製のスイーツ(笑)に舌鼓を打っているクドから声が返ってくる。ていうか、君達野球しようよ。それでなくても守備要員少ないんだからさ。
「直枝隊長ぅー! 直枝隊長ぅー!」
「なんだね三枝三等兵」
「報告であります! 自分、風紀委員会と交戦中に、数冊の文庫本を抱えて寮に戻っていく恭介氏を目撃したであります!」
「なに! それは確かか!」
「この目でしかと見たであります!」
「そうか。報告ご苦労だった三枝三等兵! そして、出来れば風紀委員とみだりに交戦することは控えるようにしてもらいたい!」
 葉留佳さんの悪行への文句は、なぜか全て僕のところに回ってくる。葉留佳さんが何かしでかした時に二木さんから説教をくらうのは、もっぱら僕の役目なのだ。本人は「善処するであります!」とか抜かしているが、絶対反省してない。賭けてもいい。
「文庫本ですか……ひょっとしたら私が貸した本かもしれません」
「西園さん何か貸したの?」
「はい、恭介さんが読みたがってた本を偶然持ってたので」
「どんな本?」
「秘密です」
 なるほど、公然と口にするのは憚られるような本か、などと思っていると「直枝さんが想像しているよりずっと普通の本です」と突っ込みが入った。なぜ僕の想像が読める。
「馬鹿兄貴はもういいから始めるぞ! 構えろ理樹! 練習じゃこらぁ―――――っ!!」
 痺れを切らした鈴が、うがーっ、と吠える。間髪入れずに投げ込まれるライジングニャットボールに、必死で食らいつく。
 どうせまたろくなこと考えてないんだろうなあ、恭介は。



「理樹、ちょっと来い」
 寮の廊下を歩いていると、部屋の扉からちょこんと顔を出して、おいでおいでしている恭介を見つけた。
「…………」
「どうした。早く来てくれ」
 このパターンで部屋に引きずり込まれてろくなことになったためしがない。僕は警戒しながらじりじりと間を詰める。そんな僕を見て警戒されていることを悟ったか、素早くシリアスモードへシフトチェンジし、
「協力してくれ。お前の力が必要なんだ」
 と、必殺の台詞を口にした。
 あー、この人本気だー。
「恭介、逃がす気ないよね……」
「おう、ない」
 話だけは聞くことにした。
 覚悟を決めて恭介の部屋の中に足を踏み入れる。
「……何これ」
「見ての通りだ」
「いや、わからないから聞いてるんだけど」
 部屋の中に鎮座していたのは、どこか西欧の民族衣装っぽい服にフード付きのマント、高級そうな毛っぽい何か、それに、ケモノの――耳?
「この前、俺は西園からある書物を借りた。それにいたく感銘を受けてな、こんなものを揃えてみたんだ」
「はぁ」
「これは、その書物に登場するあるキャラクターのコスだ」
 わかったような、わからないような。
「で、僕にお願いって?」
「これを我が妹である鈴に着せるのを手伝ってほしいんだ」
「さて、と」
 立ち上がる。
「おい、理樹どこへ行く」
「今日はNOVAの日なんだ」
「頼む! お前だけが頼りなんだ!」
「嫌だよっ! 鈴に蹴られるのがオチだよっ!」
「だからこうして理樹に頭を下げてるんじゃないか! 頼む! 鈴にこれを着せてくれっ! お前なら出来る!」
「出来ないよっ! むしろ恭介に無理なら僕だって不可能だよ!」 両者、譲らず。
 膠着状態を破ったのは恭介のため息。
「わかったよ、理樹」
「うん、恭介、無理なものは無理なんだよ……」
「お前にこれを貸してやる」
 差し出されたのは数冊の文庫本。
「あれ? これって西園さんからの借り物じゃないの? 又貸しダメだよ」
「案ずるな理樹よ。これは自分で購入した布教用だ」
「布教……」
「ちなみに俺はもう既に同じ本を四冊購入している。鑑賞用、保存用、布教用、叩き付け用だ」
 先生、ここにアホな子がいます。
 恭介は半ば無理矢理押し付けてくる。しょうがないから受け取る。
「ま、とりあえず読んでみろよ。決めるのはそれからでいいからさ。な? な?」
 何気なくタイトルを眺める。
「オオカミと香辛料……」
 ま、読んでみるくらいならいいか。



 ――そして一週間が過ぎた。



「恭介さん、例の件、是非この私めに手伝わせてください」
「おお! わかってくれたか理樹よ! ……って、どうした理樹よ。タウンワークなど持って」
「いや、行商人にはどうやってなるのかなーと思って」
「落ち着け理樹。行商に出るのはこのミッションを完遂してから、だぜ?」
「ごめん恭介、ちょっと先走っちゃったよ……」
「いいんだ理樹。気持ちは痛いほどわかる。俺達の心は一つだ」
 ぐわしっ。
 固く手を握り合う。
「ホロは!」
「僕らの!」
「嫁!!」
 チーム行商人、ここに結成。

「問題は、どうやって鈴に着せるかだよね」
「ああ、仮にも我が妹だ。手荒な真似をしてトラウマにでもなられたらことだからな」
「恭介が言うと激しく説得力が損なわれる台詞だけど、それには同意」
 僕らは休み時間を利用し、部室で作戦を練る。なにしろ相手はあの鈴だ。割と一筋縄でいけるかもしれないと思わされるところが既に罠なのだ。
「それに、ただ着せるだけでは片手落ちだ。そうだろう?」
 そうだ。
 これから鈴に着せようとしているコスの主は、六百年を生きたヨイツの賢狼だ。並大抵のキャラ作りでは、到底その足元にも追いつけない。
「せめて『ぬし……可愛がってくりゃれ?』ぐらいは言ってもらわないとね」
「『わっちは、ぬしの何じゃ?』も外せないぜ……」
 しばし、鈴に言わせたいホロ語録で盛り上がる。
 そして、どちらからともなくため息をついた。
「やっぱり僕らだけだと色々と無理があるよね」
「だな……」

「話は聞かせてもらった」

 ガラリと部室の扉が開け放たれる。そこに立つのは、
「来ヶ谷さんっ! それに、西園さん」
 仁王立ちする来ヶ谷さんの後ろにちょこんと控える西園さん。
「恭介さん、水くさいですよ。元々あの本を貸したのは私です。一言相談していただければ」
「まったくだ。なぜこんな面白そうなことに私を呼ばない。私も混ぜろ」
 二人とも目が爛々と輝いている。二人とも、あれは本気の目だ。
「西園……いいのか? お前はロレンス×マルク萌えだとばかり」
「ガチホモ、ノーマルCP……清濁併せ持つが如く、共に愉しめるのが真の腐女子です」
「うむ、西園君がいいことを言った」
「来ヶ谷さんは……いいの? 手伝ってもらえるのはうれしいけど、このミッションにはホロへの愛が不可欠なんだ」
「少年、私を見くびるなよ。原作本はもちろん、アニメ視聴、ニコニコでのMADまで極め尽くしている」
「来ヶ谷さん……!」
 もう僕らの間に言葉は必要なかった。
 同じ志を持つ四人、自然と重なる四つの手。

「ホロ(ロレンス)は!」
「僕ら(私たち)の!」
「嫁!!」

 チーム行商人、二名増員。


【恭介、ラノベを借りる(中編)】


「じゃあ鈴は小毬さんたちと一緒に着替えに行ってくれる?」
「すまん理樹ちょっといいか」
「な、何かな」
「あたしの衣装だけ、なんかみんなのより気合い入ってないか?」
「きあい、と申されますと」
「みんなの衣装には耳とか尻尾とか付いてないし」
「それはそういう役なんだからしょうがないんじゃない、かな」
「ていうか、練習なのに本番の衣装着る必要あるのか?」
「臨場感じゃないかな? かな?」
「ほら鈴くん、つべこべ言ってないで着替えに行くぞ」
「ちょっ……くるがや押すなっ」
「監督の恭介さんが決めたのですからしょうがないです。行きましょう」
「みおも腕掴んで引っ張るなーっ」
 結局鈴は来ヶ谷さんと西園さんに両サイドを固められ、ずるずると引きずられるようにして連行されていった。
「ふぅ……」
「グッジョブ、理樹。これでまた俺達の野望に一歩近づいたな」
 ポン、と肩を叩かれる。恭介だ。
「ぶっちゃけ来ヶ谷さんと西園さんの手柄だよね」
「まぁそれは否定しない」
「でもさ――」
「――ああ、ここからが本番だ」
 僕らの背中からはゆらりと炎が上がっているに違いない。それほどに、僕らの魂は熱く燃え、もとい萌え盛っているのだ。
「なんであいつらあんなに燃えてんだ?」
「さ、さぁ」
 完全に部外者モードの真人と謙吾の声など今の僕らの耳に入ろうはずもない。

 一週間前――

「そんなもの、いっそ演劇形式にしてしまえばいいだろう」
「おお!」
 来ヶ谷さんの提案に、僕らは諸手を上げて賛成した。確かに、演劇ならば多少凝った衣装を準備したって不自然ではないし、何より、数々のホロ語をこちらの思い通り、合法的に何度でも言わせることが出来るのだ。
「完璧です! これ以外に策はありません!」
 普段物静かな清楚系(とは別に清楚と言っているわけではない)の西園さんまでが興奮していたのが印象的だった。
「確かに、こういう時のためのリトルバスターズ……来ヶ谷、お前の案、採用させてもらうぜ」
 一つ決まれば後は芋蔓だ。
 劇をやる名目は表向き小毬さんが偶然委員をやっている学園祭の有志イベントに出場するため、ということにした。小毬さんには「かくかくしかじかで劇をやろうと思ってるんだ」と言ったらすぐに賛成してくれた。説得に要した時間は二
秒。ちょろいもんだ。
「ようし、理樹君、私がんばっちゃうよ〜!」
 と、いつもの調子で気勢を上げる小毬さんを見ていると、なんだか無性に自分が汚れてしまったような気がして悲しかった。泣かない。
 ともあれ、である。鈴は向こうの部屋でもぞもぞ着替えているのだからそれでよしとしよう。残りのメンバーの説得など赤子の手を捻るより簡単だったし。
「そういえば恭介、鈴の衣装って既製品?」
「いや、自作」
「採寸とかってどうやったの」
「俺を見くびるなよ、理樹。作ったのは我が妹専用の聖衣(クロス)だ。トップにアンダーはもちろん、その他の寸法など計測するまでもなく知りつくしている」
 わっはっはっと互いに笑い合う僕らの目は少しも笑っていない。
 ――負けられない。
 ――己が願望を満たすため。何より兄という名の変態から、愛しき鈴の貞操を守るため。
「恭介、僕は恭介を――越える!」
「面白い――やってみろ」
 裂帛の気合いを恭介は不敵な笑みで受け流す。僕らの視線の先では、主役専用に用意された台本が机の上、奪取されるべき宝物のごとき光を放っている。



 思い出すのはちょうど一週間前、来ヶ谷さんの素晴らしい発案の後に西園さんによって投下された爆弾である。
「演劇形式でやるのはいいですけど、ロレンス役は誰がやるのですか?」
 八割方見えていた成功に浮かれた気分は、原爆のごとき彼女の一言によって根こそぎ吹き飛ばされた。これこそがチーム行商人が孕んだ火種だ。誰も口にこそ出しはしなかったが、腹の中では「ロレンスをやるのは俺(僕または私)だ」と思っていたに違いなかった。
「まぁみんな、とりあえず落ち着きませんこと?」
 言った恭介が最も落ち着いていなかったのは誰の目から見ても明白だった。僕は咄嗟に「どうどう」と、急に沙都子口調となった恭介をいさめる。すわL5発症か、と周囲はにわかに色めき立ったが、五分後には「す、すまん。もう、大丈夫だ」と、いつもの恭介に戻ってくれた。
「きょ、恭介。大丈夫?」
「はぁ……はぁ……俺としたことが、こんな疑心暗鬼にかられるとは……俺もまだまだ修行が足らないな」
「しょうがないよ、こんな時だもの」
「そうだよな、冷静に考えればロレンス役は俺以外にありえないもんな」
「とち狂うなこの変態が!」
 来ヶ谷さんの神速の抜刀術が恭介の後頭部を襲った。
「ロレンス役はこの私に決まっているだろうが!」
「あんたもか!」
「やっと見つけた全て遠き理想郷(アヴァロン)……そう簡単には譲れん」
「……それは俺にとっても同じことだ」
「恭介! 生きていたの!」
「ああ……鈴のあられもない姿をロレンスとして拝むまで、俺は死なない」
 恭介は、打たれた後頭部を押さえてよろよろと立ち上がる。来ヶ谷さんの一刀をもってしても刈り取ることが出来なかった恭介の気迫は凄まじいが、何かが間違っている気がしないではない。
 膠着状態を破ったのは、先ほどと同じく西園さんの一言。
「ロレンス役を譲れないのは誰にとっても同じこと……このままではらちが開きません」
 確かに。西園さんの一言ですぐそこまで迫っていた武力行使の空気は薄れた。ていうか、西園さんも狙ってましたかロレンス役。
「じゃあどうするんだ。この素晴らしい恩恵を四人で分け合う方法などありはしないんだぞ」
 恭介の言葉は残りの三人の気持ちを全て代弁するものだったといえよう。固唾を飲んで西園さんの言葉を待つ僕ら。
「決定は誰にとっても公平であるべきです」
「どういうことだ西園」
「わかりませんか? つまりはこういうことです――」



「れでぃぃぃーーす、ああぁぁーーんどっ! じぇぇぇーーーーんとるめーーーんっ!」
 いつぞやのホットケーキパーティーの時のようなエコーかかりまくりの小毬さんの声。いよいよ。いつもなら脱力もののこまりんボイスに緊張走るリトバスメンバー。もっとも、局地的にだけど。
「たいへん長らくお待たせいたしましたっ! これよりっ、第一回っ! ロレンス役選考オーディションを開催いたしますっ!!」
 やんややんやと盛り上がる何も知らない子羊達。そんな空気の中、瞳を異様に血走らせ、解放の時を待つ変態という名の兄がいる。同類なのは百も承知だが、やっぱり一緒にされたくないなーとか思ってしまった。


(続くこともあるかもしれない!)








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