差出人 美坂香里 
件 名 ごめんなさい

 まず、ごめんなさい。
 帰りに話したこと、あれは全て嘘です。
 日曜日に妹の見舞いに来てくれたのはありがとう。
 でも、妹から全て聞きました。
 名雪から、相沢君が私のことを気にしてるっていうのは知ってたけど、もし気にしてくれてたなら直接私に聞いてくれればよかったのに。でも、言わなかった私も悪いのかもしれません。
 メールくれた人にはその日のうちにお断りのお返事をしました(ちなみに、メールくれた人が一つ上の人っていうのは本当の話です)。
 その人が気に入らなかったとか、そういうわけではなく、単純にその人のことをよく知らなかったからです。
 その人のことをよく知らなくても恋愛は出来ます。少なくとも私はそう思っています。恋人になってから、深くその人を知っていけばいいのですから。
 でも、私は怖かったのです。どんなにお互いのことを知っていっても結局最後は傷つけ合うのではないか、と思ってしまったからです。
 北川君ならわかっているかもしれません。私はこれまで他の人と深く付き合うことを避けてきました。親友の名雪ともそれは同じでした。深く付き合えば、最後には傷つけあうしかないのだ思います。その考えは今でも変わりません。
 だけど、傷つくことなしに人は人と深く関わりあうことなど出来ないのだということも、今では知っています。
 私は今、どっちつかずに揺れています。
 だから、もう少しだけ私は時間が欲しいと思いました。
 私を好きだと言ってくれた人にも同じことを伝えました。私は今すぐ深くあなたと付き合える自信がありません、だから、あなたがどれだけ長い時間でも私を待ってくれるというなら、私はあなたと付き合います、と。返事はNOでした。
 私も妹と同じに白馬の王子様を信じています。
 私の中の白馬の王子様は、いつまでもお姫様の帰りを待ち続ける強さを持った王子様です。
 お姫様は必ずや悪い魔法使いの誘惑を振り切って戻ってくる。そう信じる強さを持った本当の王子様です。

 そんな奴いるわけない、と北川君は笑いますか?
 私は、信じています。












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