一期一会
雪が降ってもおかしくないくらい寒い日が続いている。寒いのは苦手だから正直まいっている
私は今、寮長室で直枝くん、佳奈ちゃんと黙々と作業を続けていてるんだけど、二人とも真面目なんだか分からないけど、一言もしゃべらないで作業を続けている。私には真似が出来ないから無理していないか心配になるくらい。
「あーちゃん先輩?手が止まってますよ?」
「あ…ゴメンね?」
佳奈ちゃんと直枝くんを観察してたら佳奈ちゃんに怒られちゃった。え?怒られた理由が違う?そんなの気にしたら負けよ?まぁ…ボーっとしていたのは事実なんだけど…
「直枝?終わった?終わったならこの中に入ってる資料を整理して欲しいんだけど」
「分かったよ」
直枝くんは佳奈ちゃんの指示をうけてダンボールの中の資料を整理をし始めた。大変そうだけど、自分の作業も終わってないから手伝うことも出来ないわね。
「ねぇ?二木さん?この資料ってこのままでいいの?」
「それは二つ目のダンボールの中に入れてくれたらいいわ。それと…はい。このプリントにクラス別で書いてあるからこれを見てお願い」
「うん。」
「でも、なんでこのようになるまでほって置いたのかしら?大変じゃない…」
佳奈ちゃん…愚痴らずに頑張って…
それにしても直枝くんがきてから佳奈ちゃん変わったわね
前より明るくなったような感じがするわ
これも直枝くんのおかげなのかしらね
「直枝くんってさ〜?」
「はい?」
「佳奈ちゃんと付き合ってるの?」
「へ?まぁ…つ、付き合ってますよ?」
「な、何を言い出すんですか!?あーちゃん先輩!?」
二人とも顔を赤くしちゃって〜
見てるだけでからかいがいがあるわね
「もういいわね〜私も彼氏欲しいわ〜作っちゃおうかしら?でも佳奈ちゃんと直枝くん、お似合いだわ。良かったわね?佳奈ちゃん?」
「突然、どうしちゃったんですか?」
「人生に出会えた人って何かの運命なのよ?これって一期一会って言うものなんだから。直枝くんに会えたのも何かの運命、だから大切にしなさい?」
「は、はい…」
私に似合わない台詞が出ちゃった
私は人をからかうのが趣味なのに…なんでって?それは、からかった後の佳奈ちゃんはかわい過ぎるし病みつきになるからに決まっているじゃない
「もう…なに顔をニヤニヤさせているんですか?ニヤける前に手を動かしてください。先輩が一番遅いんですから…」
佳奈ちゃん…まだ顔が赤くなってるのにそんな事言っても説得力ないわよ…
「私も口だけじゃなくて手も動かしているわよ?ほらっ作業が終わったなら直枝くんの手伝ってあげたら?一人でするのは大変そうよ?」
「そうですね…あーちゃん先輩は続けてくださいよ?…直枝、手伝うから半分くれない?」
佳奈ちゃんと直枝くんか…お似合いの二人ね…
佳奈ちゃん…本当に良い人と出会えたわね…
「直枝、委員会の資料はまとめたわよ?次はどれかしら?」
「うん、ありがとう。次は寮生の名簿の整理をしてくれないかな?僕は生徒会の資料を整理するから」
ふと時計を見てみたら作業を始めてから随分と時間が経っていた
「二人ともありがとう。もう時間だから、今日はこれで終わって良いわよ?お疲れ様〜」
「「お疲れ様でした」」
二人はそう言って寮長室を出て行った
一人になった部屋でお茶をいれ、一息ついた
白い湯気が上る
「二人とも楽しそうだったわね…前まではあんなに無愛想だった佳奈ちゃんが変わるほどだから直枝くんには感謝しないといけないわね」
なんか今日は二人のことばかりのことを考えているわね
しかも今日佳奈ちゃんに一期一会なんだから…って言っちゃったし…
でも、こうして直枝くんと佳奈ちゃんが出会えたことも何かの運命だと思っちゃうし…
一期一会だからこそ、この出会いを大切にしないと…私、まだ十八歳なのに、オバサン臭くなったわね…
少し、自重した方が良いかもね…
「それにしても、温かい…」
入れたばかりのお茶は外の寒さを忘れさせてくれるくらい温かかった
ふと頭の中に出てきた言葉を口に出してみた
「二人に幸あれ」