棗恭介大予言 2008 ”EX”はもう始まっている!?     くろG



※この物語は事実を元にしたメタフィクションです


「恭介ー。みんな連れてきたよ」
 それはとある日の放課後の事だった。
 僕は恭介にみんなを集めてくるように言われ、みんなと共に空き教室まで連れて行った。
「あれ? なんか暗いな」
 教室のドアを開けたとたん開口一番に鈴がそういった。
 それもそのはず、教室の窓はなぜか暗幕で遮られ光がほとんど入り込まないようになっていた。
 とりあえず入り口のところのスイッチから電気をつける。
「遅かったなみんな」
 その瞬間、教室の真ん中で仁王立ちしている恭介が目の前に現れた。
「恭介。真っ暗な部屋で何してたの?」
「むろんお前らを待っていた」
 答えになっているようななっていないような事を言って恭介は僕らを中へと招き入れた。
 そして教室の真ん中に置かれた大きな長テーブルの前に各が座る。 
「で、今日はわざわざこんなところに俺たちを呼び出して、いったいなんだってんだ?」
 全員が席に腰を落ち着けた頃を見計らって真人が聞いた。
「まぁ、まずはこれを見てくれ」
 そういうと恭介はみんなへと資料らしきものを配り始めた。
『リトルバスターズEX
 恋愛アドベンチャーゲーム
 2008年7月25日発売
 価格 \8,800(税別)
 対応OS Windows 2000/XP/vista
 メディア DVD-ROM』
「ふむ、これは我々が出る次回作についての資料のようだな」
 いち早く読み終えたらしい来ヶ谷さんが資料を置いて言った。
「ああ、そうだ」
「恭介。これがどうかしたの?」
「実は。俺はここ数日とある疑問からこれに関する調査をしていたんだ」
「疑問? なんだ、なにかおかしいことでもあるのか?」
 謙吾の言葉に恭介は頷く。
「ああ、まず諸君も知っているとおり次回作となるリトルバスターズEX、以後はとある事情によりLBEXと略させてもらうがこれが18禁作品だと言うことは知っていると思う。」
 その言葉に数人は顔を赤らめつつも全員が頷く。
 恭介はその様子を確認した後話を続け始める。
「昨今、そういう恋愛ADVが増え、業界では逆移植、またはリーバス等と呼ばれている現象だ」
「それ自体は別に珍しくないんじゃないでしょうか?」
 西園さんの言葉に恭介は頷く。
「実際少しずつだがここ数年顕著に増えてきているのが実情だ」
「でも、そこに対して恭介氏は疑問を持ったと?」
「ああ、普通のメーカーがそういうことをやる分には俺も疑問を持たなかっただろう。しかし、今回それをやったのは我らがkeyと言うことで俺は何故だか違和感を感じたんだ」
「・・・・・・違和感、ですか?」
「みんなが認識しているかは知らないが、keyというブランドは商売下手で有名なんだ」
「ふむ、その話なら私も聞いたことがある」
 恭介の話に相づちをうちつつ来ヶ谷さんが話を引き継ぐ。
「コピーし放題のディスク。品質重視による販売間隔の長期化、まぁ、他にも色々と言われているな」
「そうだ、その商売下手なはずのkeyが珍しくこんな商法を取ったという事が俺にはどうしても気になったんだ」
「確かに、言われてみると少し変化もしれないね〜」
 小毬さんが納得した面持ちで同意する。
「ああ、そこで俺はまず新たにタイトルに付け加えられたEXに注目してみたんだ」
「えくすたしぃー・・・ですか?」
「いや、能美それをそのまま受け取るならEXと略して表記する必要はないはずだ」
「言われてみればそうだな」
 謙吾が頷く。
「つまりこのEXというのは別の意味を持つ」
「ほう、なかなかおもしろい解釈だ。それで恭介氏はなんと解く?」
「まずXこれはおそらく18禁の事と見て間違いはないだろう。実際新作はX-rated化されるわけだしな」
「じゃ、Eはなんだ? エロか?」
「いやいや、それじゃあ意味被ってるから」
 鈴に突っ込みをいれつつ先を促す。
「Eはおそらく変化を表す言葉、そこから考えるとおそらくEvolutionだ」
「えう゛ぉりゅーしょんですか〜」
「日本語に直すと進化だね〜」
「ああ、そうだ」
「つまり進化するエロ!? おお、それはすごそうですネ!」
 なぜか興奮しながら葉留佳さんは立ち上がる。
「いや、それだったら俺もここまで問題視しないさ」
「じゃ、違うって言うのか?」
「ああ、ここで先ほどの逆移植つまりリーバスという要素が絡んでくる」
 そう言いながら恭介は紙に大きく右から左へとLBEXと4文字記す。
「つまりこのLBEXというのは逆に読めという暗号だったんだ」
「なるほど、それでXとEは18禁によって進化するという解釈になるわけだな」
「その通りだ来ヶ谷」
「じゃ、恭介BとLはなんなの?」
「・・・・・・」
 その言葉に恭介は押し黙る。
 それとは逆に西園さんがなにか衝撃を受けたように固まっていた。
「西園さんどうしたの?」
「も、もしかして・・・・・・」
「・・・・・・やはり最初に気づいたのはお前か西園」
「みおちゃん何かわかったの?」
 みんなの視線が西園さんに集まる。
 その視線を受けて、西園さんは信じられない面持ちで声を絞り出すように言葉を発した。
「Boys Love・・・・・・」
「ぼーいずらぶですか?」
 聞き慣れない言葉だった。
 周りを見てもほとんどの人間が首を傾げている。
 ただ、来ヶ谷さんだけは得心が言った様子でなにやら微笑んでいた。
「恭介それで、ボーイズラブというのはいったいなんなんだ?」
 途切れかかった会話に謙吾が代表して質問を続ける。
「ボーイズラブっていうのはな。近頃市民権を得てきた一部の女性に人気のある文化の事だ」
「文化?」
「ここにとある辞書からの引用文がある」
 そういって再び恭介はみんなに資料を回す。
『女性読者のために創作された,男性同性愛を題材にした漫画や小説などの俗称。BL』
 そして、僕はそれを読んだ瞬間愕然としてしまった。
「きょ、恭介・・・・・・これは!?」
「ああ、そうだ。つまりLBEXとはX-rated Evolution Boys Loveの略・・・・・・」
「もしかしてそれって」
「次の作品によって18禁BLゲーブランドへとkeyは進化するという意味だ」
 そういって恭介は右手を振り上げてその恐るべき結論を僕らにつきだした。
「こんどの俺たちの新作は理樹を主人公とした男達のホモホモワールドだったんだよっ!」
「「「「「「「「「な、なんだってーーーっ!?」」」」」」」」」
「恭介、そ、そんな恐ろしいことがあるのか!?」
「ああ、今回の行動は確かに突発的に見える。しかし、過去のkeyの行動を見るとその謎が解けるんだ」
「まず、今回の首謀者はおそらく原画のいたるだろう」
「なぜ、そんなことが言えるんですか?」
「いたるはボーイズラブにはまっていることが確認されている、実際すでに『ぼくらはみんな、恋をする』という作品を手がけているんだ」
「でも、keyの主導者は麻枝だよね? いたるがどうこういったて変わらないんじゃないの?」
 僕の言葉に恭介は悲しそうに首を振る。
「理樹お前は覚えていないのか? 俺たちの作品つまりリトルバスターズに対する麻枝の発言を・・・・・・」
「引退発言か・・・・・・」
 来ヶ谷さんがぽつりといった。
「そうだ、そして実際次回作ではすでにいたる主導の作品であることが確認されている。つまりkeyがボーイズラブに進むのは確定されたと言ってもいい」
「あ、でも、恭介さん。リトルバスターズの原画は男キャラとかいたるさんが関わってなかったはずです。それは矛盾しないのでしょうか?」
 クドのもっともな疑問。
 しかし、それにも恭介は首を振った。
「それは残念ながらカモフラージュだ。よく見てくれ」
 そういって恭介は新たな資料をみんなに回した。
「男全員はNa-Gaであることは確認されている。ここまではいいな?」
 みんな頷く。
「残りのヒロインだが、まず鈴」
「あたしか?」
「ああ、まずお前は子供の頃男の子と理樹に勘違いされている」
 そういえば、驚いたっけと思い出す。
「つまり実はやっぱり男でしたと言い張ったところで問題ない下地はできているわけだ」
「そうなのか?」
 鈴はいまいち納得言ってない様子だったが恭介は続ける。
「次に能美」
「わ、わたしですか?」
「能美の場合は残念ながらつるぺた、つまり胸がない」
「た、確かにそうですがそんなにはっきり言われると凹みます〜」
「それにリトルバスターズには裸のCGもあったが実際男と言っても遜色のないスタイルだった。もちろん局所は写っていなかったので性別の確認は出来ていない」
 みんなその言葉に頷く。
 いや、クドだけは凹んだままだったけど。
「それに実際俺は見たことがあるんだ髪をショートにした能美、つまり男版の立ち絵の能美CGを!」
「え? そ、そんな・・・・・・わ、わたし本当は男の子だったのですか・・・・・・」
 更なる衝撃を受けたクドがうなだれる。
「そして残るNa-Ga原画の西園、お前は確かに女だ。しかし」
「・・・・・・なるほど理解があるサブキャラというわけですか」
「ふ、さすがに理解が早いな」
「確かに、私には喜ぶと言ってもいい事態ですので・・・・・・」
「つまりNa-Ga原画のキャラは既に全員BLに対するなんらかの要素を持っているんだ!」
 そういって恭介はみんなの顔を見渡す。
「そもそも、お前らは疑問に思わなかったのか? どんなに仕事が遅くても今までたった一人でやっていた原画をいたるが半分とはいえ明け渡したのを」
「言われてみれば確かに・・・・・・」
「つまり、Na-Gaに半分原画を明け渡すことによって、時間的な余裕を作り、リトルバスターズを作っている裏で既にEXの制作に入っていたんだ!」
「そ、そんな事が実際にあるのか?」
「ああ、間違いないだろう、でなければkeyがこれほどの期間で次回作を出せる事の説明がつかない」
「なるほど・・・・・・」
「さらに言うならばEXの存在を世間に公表したのはkeyオフィシャルのいたる達がやっているネットラジオの中だったということも事実を裏付けている」
「そういえばそうだった・・・・・・」
「しかも、今回の事に対しての複線はもっと前に張ってあったんだ」
「複線・・・・・ですか?」
「ああ、実に巧妙だ。前作のクラナドを急遽全年齢に差し替えることは覚えているか?」
「そういえば、最初は18禁で出すと言っていたのに全年齢版で出すかもと少しずつ発言を変えていったんだっけ」
「その通りだ。つまりそうやってクラナドを全年齢にすることによって、リトルバスターズも全年齢にしたことに対する違和感をなくしたんだ!」
「あの、変更にはそんな意味があったなんて・・・・・・」
「しかも、クラナドにはさりげなく攻略できる男キャラが入れてあった」
「そんなのあったか?」
 真人が首を傾げる。
 だが、その疑問は西園さんがすぐに答える。
「春原 陽平・・・・・・」
「そうだ。西園は知っていたようだが、実はこいつとは恋愛エンドが存在する」
「そんな馬鹿な、俺は全員クリアーしてアフターまで見たがそんなのは見なかったぞ?」
 謙吾がそう反論する。
「いや、正規のルートじゃないんだ。各ヒロイン達に会いつつ関係を発展させないと最終的にそのルートに入る」
「そんなルートがあったのか・・・・・・」
「一応BAD扱いとなっていますけど。色々な女性よりもずっと側にいた親友を選ぶ・・・・・・それはBLの世界では王道と言っていい展開です」
 西園さんがそう補足した。
「そもそも考えてみてほしい」
 恭介がみんなを見回す。
「恋愛ADVにサブキャラで男3人は多すぎるとは思わなかったか?」
「い、言われてみれば確かに・・・・・・」
「しかも、その男達が最終ルートのメインキャラだ。ヒロインであるお前達を差し置いてだ」
 考えてもみなかったけど確かにそれは不思議な現象だった。
 恋愛ADVとは本来は女の子とのラブラブな展開がされていくものだ。
 しかし、リトルバスターズに至っては僕と恭介達との友情物語で幕を閉じている。
 恋愛ADVとは言えないような結末といえるんじゃないだろうか。
「そういえば、私ずっと思ってたんです・・・・・・」
 ふいに西園さんが口を挟む。
「恋愛ADVなのに、そもそもリトルバスターズは男キャラのバランスが良すぎるんです」
「ふ、流石だな。やはり気づいたか」
「はい」
「西園さんどういう事?」
「そうですね。ボーイズラブゲームといっても基本は恋愛ADVです」
「うん」
「つまり、普通のヒロインが出てくるような通称ギャルゲーと同じようにいわゆる各属性にあったキャラ付けをさせた男の子達が出てくるんです」
「えっと、それはつまり恭介達がそういう属性を持ってるってこと?」
「はい、順を追って説明していきますと・・・・・・」
 そういってまず西園さんは恭介へと振り向く。
「まず、恭介さんは王子。基本的に完璧で頼りになり非の打ち所のないいわゆるギャルゲーで言うところのメインヒロインのようなキャラです」
「ああ、確かにそんな感じだ」
「しかも、直枝さんだけには弱みを見せるといった特別扱いという重要なファクターも持っています」
 確かに恭介はリトルバスターズ内においていくつかそんな場面を見せていた事を思い出す。
「次に井ノ原さん」
「ん? 俺か?」
「井ノ原さんはいわゆる頼れる親友キャラそしてさらにたくましい肉体を持った筋肉キャラ」
「まぁ、確かに俺はそうだけどよ」
「直枝さんから見ればいつも側にいてくれる存在で、心のよりどころです。そして何よりそのたくましい筋肉が直枝さんの華奢な体とのコントラストが絶妙です」
 そういって西園さんは真人と僕を見比べて少し頬を赤らめる。
「きっと、常日頃から直枝さんもその筋肉を熱い眼差しで見ているはずです」
「確かに、そりゃあ、ありえるぜ」
「いやいやいや」
 否定する僕に目もくれず西園さんは謙吾へと視線を移す。
「そして宮沢さん、あなたはいわゆるへたれ系です」
「へ、へたれ・・・・・・」
 西園さんの言葉にショックを受ける謙吾。
「いえ、この場合は悪い意味ではないんですよ」
「そうなのか?」
「はい、ヘタレ系というのはいわゆる強そうなキャラなんですが実際には押しに弱かったり、人付き合いが苦手だったりするキャラ」
「・・・・・・俺にはどうにも貶されてるようにしか感じないんだが」
「いえ、いわゆるギャルゲーで言うところのツンデレ系といったようにBLの世界ではギャップを楽しむ属性として欠かせないものの一つなんです」
「そ、そうなのか・・・・・・」
「そして、最後に今回男キャラへと転身する事になった能美さんと鈴さん」
 その言葉で二人に視線が集まる。
「能美さんはいわゆるBLのロリつまりショタ系です」
 それは見るからに納得だったので誰も何も言わない。
「そして鈴さんは、井ノ原さんや恭介さんとの対比キャラつまり、親友キャラであり弟キャラというわけです」
「なるほど・・・・・・」
「これで乙女達が求める属性は一通りそろったと言えます。そして攻略キャラは5人。今のBLゲーの世界ではもっともポピュラーな数字です」
 西園さんはそう一通り説明を終えると席に着いた。
「どうだ、みんな? これでわかっただろう」
 話を引き継ぎ恭介が僕らを見渡して言う。
「クラナドからの全年齢化、キャラクターの設定、スタッフの行動といった全ての事柄がBLという流れに集約されているんだ」
 それは衝撃の結論だった・・・・・・。
 恭介の言葉に反論できずにみんな押し黙る。
 僕はその悲痛な沈黙に耐えられず思わず恭介に言った。
「な、なんとかならないの?」
「理樹・・・・・・」
 恭介は悲しそうに目を伏せる。
「俺にだって・・・・・・どうにもならないことはある・・・・・・」
 それはまさに死刑宣告だった。
「俺たちには既にその恐怖が体現する日を待つしかないんだ・・・・・・」
 


――2008年7月25日

――その日、待望のリトルバスターズX-ratedを手に入れる鍵っ子達

――彼らは家に帰り、手に入れたそれをすぐさまプレイし始めるだろう

――まだ見ぬアダルトな展開による期待

――それにより彼らは少しばかり違和感を感じても『その時』が来るまで押し進めてしまうのだ

――そして『その時』が来た瞬間

――衝撃のあまり鍵っ子達の精神は崩壊させられ

――新たな世界を強引に開花させられる事となるのだ

――鍵っ子達を恐怖に陥れるであろう約束された日

――その日まで、あと77日






                            〜樋上いたる先生の次回作にご期待ください〜

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