孔明の罠        mas



 ふっふっふ、今日はめでたい記念日……。何の記念日かと言うと、往年からの宿敵であるみおみおみおちんの弱みを握れる日がやってきたのだ。はるちんが熟考に熟考を重ねてずっと考えてきた偉大なる罠を仕掛けて、それに引っかかったみおちんの姿を激写! その写真を使ってみおちんを脅してへっへっへ……これ以上は放送禁止ワードが多分に含まれていてはるちんの口から言えそうにはありませんネ。
 そんなこんなで私は昼休み、とある放送室前にやってきたのだった。ここなら人通りも人気もほとんどないし何も恐れずに作戦実行が出来るってわけですヨ。はるちんあったまいい!
 糸のような細いものを教室と向かい側の壁にピンと張らせて結んで足に引っかかるようセットする。後は獲物が来るのを待つだけのなんと画期的な罠! これはかの有名な孔明さんもビックリの罠。後はみおちんを放送室前に呼び出すだけ! ふふ……我ながら完璧すぎて思わず笑いがこみ上げそうになっちゃいますヨ。仕方ないですネ。

「あら、葉留佳。こんなとこでなにやってるの?」
 む、獲物を待ってるうちに厄介なお姉ちゃんがパッと現れてきましたネ……。厄介なので適当にぺらぺら話をして追い払ってしまいましょう。それにこの究極完全完璧無敵、そして森羅万象なるはるちんは、お姉ちゃんという邪魔が入ってしまってもこんな些細なことではめげないのだー!
「ちょっと人を待ってるだけなのですヨ。ところで森羅万象ってなに?」
「ふーん、にしてはちょっと挙動不審ね。またなにか問題を起こそうとしているのなら……分かってるわね? 後、そういうのは自分で調べなさい」
「分かってるよ! だからそんなこと私はもうしないと決めたからだいじょーぶ!」
「はいはい。じゃあまたね」
「うん、じゃねー」
 そうして、お姉ちゃんはゆっくりと私の前を通り過ぎようとした瞬間、前のめりになって廊下に倒れこむ姿が私の目に映った! なんで? どうして? と考える間もなく、自分が仕掛けた完璧な罠のせいだと気付いてしまったはるちんであった! お姉ちゃんはあえなくズッテーン! と顔面から転んでしまって廊下とキスしあっていてさあ大変なのですヨ! きっとお姉ちゃんは起き上がってぶち切れてこの麗しい乙女のはるちんに襲い掛かってきてベッドインなんてことになってしまう! お姉ちゃんの短いスカートがめくれて美味しそうな太ももと美味しそうなぱんつが丸見えになっているのを横目に絶体絶命大ピンチのはるちんが取った行動とは! スタコラサッサするっきゃない! と、はるちんはお姉ちゃんが来た方に向かってダッシュ! だけどその時はるちんに衝撃が走る! 自分もお姉ちゃんと同じように究極の罠に引っかかってしまったのに気付いたのは超スピードで迫ってくる廊下の地面をこの目で見た時だった! そして、私もお姉ちゃんと同じように顔面から廊下へとダイブ! はるちんの神聖なファーストキッスが廊下に奪われてしまう瞬間でもあった! そこで私はファーストキッスの味ってどんな味
なのだろうかと思考を重ねる。でもはるちんは考えるのをやめた。私にそんな難しいこと考えさせるなー! むきー! そうこうしてるうちに目の前に迫ってきた壁と衝突。埃と色々なものが混ざった味だった。

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